
「調べものをするならGoogle検索」。この常識が揺らぎつつあります。
近年、ChatGPTのような対話型AIが普及し、ユーザーは「検索」ではなく「会話」によって情報を得る体験を手にしはじめています。
クリックして情報を探すのではなく、質問すると答えが返ってくるその体験を「心地よい」「便利」と感じる人が増えています。この傾向を反映したのか、Google検索での検索キーワードも「単語」から、質問形の「節」とするワードも増えてきています。
なぜ人はChatGPTに魅力を感じるのでしょうか?そしてGoogle検索とどのように使い分ければよいのでしょうか?今回はユーザー体験(UX)の観点からその理由を探ってみたいと思いました。
1. 研究が示すChatGPTとGoogle検索の違い
「ChatGPT vs. Google: 検索パフォーマンスとユーザーエクスペリエンスの比較研究(ChatGPT vs. Google: A Comparative Study of search Peformance and User Experience)」という米マイアミ大学に所属する研究者らが発表した論文に、興味深いことが書かれていました。
この研究は、参加者を「ChatGPT Search」と「Google検索」に分け、情報探索タスクを行うという方法で実施されました。結果は次のようにまとめられます。
- 検索時間の違い:ChatGPTを使ったユーザーは、一貫して短い時間でタスクを完了。
- パフォーマンスの差なし:タスク全体の達成度に有意差はなかった。
- 教育レベルの影響が少ない:ChatGPT利用者は学歴にかかわらず、ユーザーの検索能力に差が出なかった。(Google検索では学歴差が出るとも捉えられる。)
- 主観的評価の違い:Google検索とChatGPTで信頼度は同等。しかしChatGPTの回答は「情報の質が高い」と評価され、楽しさや満足度も高かった。
- 使いやすさ:ChatGPTもGoogle検索も同程度
- 弱点:ChatGPTは、事実確認タスクではGoogle検索に劣り、誤情報や不一致のリスクも指摘。また、過度の依存につながりやすい。誤った情報を生成し、一貫性のない結果をもたらす可能性もる。
ChatGPTは「効率」と「体験価値の向上」に優れている一方で、正確さや裏付けが求められる場面ではGoogle検索に軍配が上がるという結果となっていました。また、ChatGPTは学歴に関わらず検索能力の差が出ないという観点は、今後、現実の構築能力や、どのように心理面に影響していくか?を知りたいと思いました。
引用:ChatGPT vs. Google: A Comparative Study of Search Performance and User Experience
2. ChatGPTが「心地よく感じられる」理由
対話形式のパーソナライズ
Google検索は「キーワードと一致するページ」を並べて提示します。一方、ChatGPTは質問文を理解し、文脈に沿った回答を生成します。ユーザーはまるで「自分のためにまとめられた答え」を受け取るような感覚を持つため、心理的な満足度が高くなります。
理解のしやすさ
ChatGPTは教育レベルに依存せずわかりやすく説明できる点も評価されています。専門用語を噛み砕いて解説したり、比喩を交えたりと「伴走者」として学習を支援する役割を果たします。Google検索でも同様の情報は得られますが、複数サイトを行き来し、読み解く労力が必要です。
楽しさと没入感
論文で強調されているのは「楽しさ」の要素です。会話形式は、ただ情報を探す行為を「対話体験」へと変えます。このプロセスが没入感を生み、利用者は「自分に合った答えがすぐ返ってくる快感」を覚えます。
最近は、私も気晴らしの会話相手としても使っていますが、文法や文脈の崩れも多少は補って解釈してくれています。最近の進化では、親しい人同士の会話のように主語なしの会話や、「そこのアレとって!」のような雑な質問にも、文脈を読みとったうえで返事をくれることに、心地良さを感じています。
3. Google検索の強み
一方で、Google検索には揺るぎない強みがあります。
事実確認と裏付け
ChatGPTは回答を生成する仕組み上、誤情報を含む可能性があります。一方で、Google検索は正確性が求められる調査や公式情報の確認は、一次情報に直接アクセスできるのはメリットです。
最新情報への対応
ChatGPTの学習データには更新のタイムラグがあります。そのため、速報性のあるニュースや直近の発表はGoogle検索に頼るのが安全です。
比較検討の自由度
Google検索は複数の情報源を提示し、ユーザーが比較・検討する自由を提供します。多様な視点を取り入れることで、判断の偏を最小限にしていくことが可能になります。
4. どう使い分けるべきか
ChatGPTとGoogle検索は「どちらか一方を選ぶ」ものではなく、目的に応じて併用するのがベストです。
- ChatGPTを使う場面
- アイデア整理
- 疑問を素早く解消したいとき
- 専門的な内容をわかりやすく説明してほしいとき
- Google検索を使う場面
- 事実確認や正確な引用が必要なとき
- 最新情報を入手したいとき
- 複数の視点を比較したいとき
この「両輪使い」によって、効率性と信頼性を同時に確保できます。
5. まとめ
ChatGPTは、検索体験に「心地よさ」と「楽しさ」をもたらしました。ユーザーは短時間で答えを得られ、教育レベルを問わず次の世界をみせてくれる体験ができます。一方で、事実確認や最新情報の収集ではGoogle検索が優位です。
研究が示す通り、両者はそれぞれ異なる強みを持っています。今後はChatGPTと検索エンジントの統合が進み、両者のメリットを兼ね備えた「次世代の情報探索体験」が主流になりつつあります。
Googleが2025年中にAIモードという、Googleの新しい検索機能を日本でも公開すると、日経新聞が公表していました。このAIモードは、アメリカでは2025年5月に一般公開され、日本では8月22日に一部利用できるようになっています(英語版)。
今後の検索の主軸はどんどん変わっていきますが、現時点で私たちができる最適解はChatGPTとGoogle検索を「補完し合うツール」として使い分けること。効率と正確さの両立が求められていると感じています。
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